2024年の中学受験についてはまだ終了していないものの、各大手集団指導塾の実績の全貌が見えてきつつあります。
業界トップのサピックスは前年との比較で全体的に実績を下げており、業界2番手(?)の早稲アカはこれとは真逆に全体的に実績を上げています。
サピックスにとってはネガティブな結果ですが、男女で最優秀層が集う開成と桜陰の実績については微減に留めており、このあたりは業界トップのプライドというところですかね。(繰り上がりなどの状況によっては前年同といえる実績まで盛り返す可能性があります)
この2つの塾にフォーカスしますと、サピックスが実績を下げている分以上に早稲アカが実績を伸ばしているように見えますし、「追い上げる早稲アカがサピックス1強時代に待ったをかけるか?」という構図に見えますね。
私の感想と薄い分析を進める前に、お断りを入れさせていただきます。
我が家はチリ太郎の受験の際に早稲アカのNNで実力を伸ばしてもらいましたので、私自身の立場としては「早稲アカびいき」です。(もともとトップよりもそれを追う2番手、3番手を選ぶ性格でもあります)
とはいえ、チリ太郎の受験時にサピックスの季節講習にも通わせており、チリ太郎が選ぶならサピックスでもよいなと思っていたほどなので、同塾に悪い印象は全くありません。(さすがトップ塾だなと思うことが多かったです)
2024年の中学受験では、「サピックス1強に陰りが見えた」というのは大きなニュースといえるかもしれません。
ただ、依然として圧倒的な実績ではありますし、そもそもこれまでの実績が良過ぎたという見方もありますね。(こういう年もあります的な)
重要なのは、この結果を受けてサピックス側が「動くか動かないか」ですよね。
カリキュラムの見直しなどは普段から行われていると思うのですが、例えば、この結果をネガティブに捉えて、何かを変えてくる動きがあるのかどうか? すごく注目しています。
私の個人的な考えですが、サピックスはコロナ初期の頃の対応でイマイチなシーンがありました。
2024年受験組が入塾するタイミングを考えたとき、そうしたことは影響していなかったか? と思うところはあります。どうなのでしょうね?
ただ、上記の考え方は「ネガティブな情報により獲れたはずの優秀層の一部が他塾に流れた」ということであり、学習塾としてはあまり前向きかつ本質的な総括とは言えませんね。(自分で言っておいて自分で否定する)
さて、一方の早稲アカです。
早稲アカ躍進の理由と言えば、看板であるNNの指導力が伸びているという1点に尽きると思います。
早稲アカの場合、本科とNNは分離した別の塾のような印象があり、その点は実にユニークな指導体制と言えます。
チリ太郎は早稲アカの本科生ではありませんでしたので、通常授業の情報には疎いのですが、NNはある意味私の理想の塾を体現しているなと思う程です。
大した人間でもないのに「私の理想」などと言ってしまいましたが…
・特定の学校を目指す「対策」に特化している
・もちろん、カリキュラムも講師も志望校対策に特化しており、経験も豊富
・NNオープン模試に合格すれば前期にも講座があり、志望校が固まっていれば他塾生より長く対策時間を取れる
・授業は楽しく、通塾のモチベーションを維持するのに申し分がない
・本科のような「宿題」的なものが少なく、NN自体の負担は少なめ
以上のような点が特徴であり、優れている点だと思っています。
勉強って多くの子には楽しい物じゃないと思います。特に、無目的に成績を上げるだけの勉強はなかなかモチベーションが続きません。
一方で、目標の学校に向けて「対策を練る」ことや、その方向性に従って「実力を強化する」ことというのは、子供目線でも楽しいだろうと思っています。
NNはそこを分離することで実に魅力的な「塾」となっています。
評論家的なことを言えば、サピックスはスパイラル学習とその延長に志望校対策を据えており、基本的には長く通って自塾で最後まで面倒を見るスタイルです。ですので、早稲アカのようなスタイルは真似できないですね。
偉そうにユーザー目線から言うなら、今のカリキュラムを維持しつつ「もっと志望校対策の強さを打ち出してもよいのではないか?」とは思います。
例えば、「サピックスってどの中学を目指すときに選択する塾なのか?」みたいな問いがあったとします。
2024年受験で実績があまり落ちていない学校、即ち「筑駒」「開成」「桜陰」「駒東」あたりには相性が良さそうに見えます。(これらの学校の合格実績で他塾が逆転するのは難しいと思います)
ただ、そういうふうには売り込んでいない。強いて言えば、「最上位を目指すならサピックス」というスタイルだと思います。
学習塾って「学力を上げる」って目的もありますが、基本的には中学、高校、大学といった目標に向けて「対策をするところ」だと思っています。
まして、最上位に行く子の場合は、別に学力を究極に伸ばす必要ってないのですよね。(「筑駒」は究極まで伸ばさないと確実には合格できないと思いますが…)
そういう子に必要なのは、「目標校別にコツがあるよ」ってアドバイスしてあげることかと思います。
本当に本当に偉そうな発言ですが、サピックスにはそういうところに改善の余地があるかなと思います。
最後にもう1回早稲アカの話に戻ります。
2024年受験で早稲アカが躍進したとはいえ、来年、再来年とサピックスとの差がどんどん縮まっていくのかというと、それは簡単ではないと思います。
NNというのは早稲アカの「看板」であり、その「ブランド」を維持しながら実績を伸ばす必要があるのですが、構造的な難しさがあるのです。
量=「合格者」での実績を伸ばすためには生徒数を増やす必要がありますが、受入れ校のキャパの問題がある上、何よりも質=「合格率」を大きくは落とせないところ、この業態は質の変化が外に見えすぎるのです。
現状、NNクラスの在籍数って中にいる人にはわかります。
最後には当該受験校の合格者数が出ますので、(ほぼ)NNクラスとしての合格率が明らかになります。
このデータ(当該校に何名受験して何名合格したか)は、他塾では表に出していないはずですが、NNクラスの場合は「大体推計することができる」という状態にあります。(ですので、説明会などでは教えてくれます)
そうなると、量を獲りに行って質を落とすわけにはいきませんので、拡大路線にブレーキがかかります。必然的に爆発的に実績を伸ばすのが難しくなります。
早稲アカの場合、本当に業界トップを目指すならそのあたりに課題があります。
あと、「看板であるNNだけど、早稲アカ本科生が優先されない(外部生のワリを食っている)」という問題も、隠れた不満(いや、根強い不満か…)として存在します。
私が言うように「別の塾だ」と割り切ってくれればよいのですが、同じ早稲アカですのでそうは思ってくれないですよね。
評論家らしい、どっちつかずのオチとなりましたが、両塾の「次の一手」に注目したいと思っています。
結果として、各塾の「特徴」みたいなものがより鮮明になり、ユーザーが選択しやすい環境が整備されていくことに期待しています。