昨日に続き、子供とお金の話です。最後に話の関連性が明らかになります。(雑談の域を出ませんが)
今から20数年前、私が大学生の頃の話です。
お金のなかった私は帰省するのに青春18切符を使用し、在来線を乗り継いで夜行列車の中にいました。座席にあぶれた人々は、車両の少し広くなっている部分の床に座っており、私もその中におりました。すると…
「お兄さんが持ってるそのパソコン、マックだよね。」
近くに座っていた若い男性が声をかけてきました。年の頃は同じくらいですが、肌は浅黒く、素肌の上にアディダスのジャージという出で立ちで、とても“雰囲気”のある人でした。
「そうですが…。」
私は相手を刺激しないよう、丁寧に答えます。
「俺、何してる人に見えます?」
「むっ、難しいですね~。(チンピラかチーマーでなきゃ、夜の仕事の人くらいにしか見えないよ…。)」
「じゃあヒント出します。月給で、多いときには100万以上いくことがある職業です。」
「(もう完全に夜の仕事じゃん。でも言えないよなぁ。)…エ、エグザイルかなんかの人ですか?!」
「お兄さん、おもしろいね。正解は写真家です。」
「へー、お若いのに写真家ですか。写真家って儲かるんですね~。」
「本当は従軍カメラマンとかに憧れてこの道に入ったんだけど、今は先輩と二人で事務所立ち上げて、広告用の写真なんか撮ってる。お兄さんが持ってるマックとかの写真も撮ったことあるよ。」
話してみれば、怖いのは見た目だけで、気さくな方でした。その後、その方が九州の実家に帰るのに、興味本位で青春18切符を使ったら、とんでもなく大変な道中となったことや、写真家を志してからこれまでの話、今の仕事の話などを聞きました。
「それにしても、若くしてこんな自立してて、親御さんからしたらありがたいでしょうね。」
「俺ね、今計画してることがあるんすよ。」
「なんですか?」
「ほら、よくニュースなんかで、子供を1人育てるのに何千万だかかかるって話あるじゃないすか、大学行く場合だと思うけど。あれを俺の場合に当てはめて、生まれてからこれまでにかかった生活費とか計算して、親に返してやろうかなと思ってて」
「それは…、お金をもらえるのは嬉しいけど、親からしたら嬉しいのか微妙ですね…。」
「そうっすか?」
「そうですよー、大体、子供にかけたお金なんて、親からしたらいくらだなんて言われても覚えてないし、ピンときませんよ。だいたい、子供の方から縁を切られるみたいで、そんな名目のお金は受け取れませんよ。」
「そんなもんすかね。」
この後、もう少しどうでもよい話をして別れたのですが、先日、記事を書いているときにふとこの記憶が蘇りました。
読者の方にも、この時の私の発言に賛同いただける方が多いのではないでしょうか?
一昔前なら、「大学まで出してやったのに。授業料や仕送りにいくらかかったと思ってるんだ」なんてフレーズが聞かれもしましたが、それですら本気で言っている人も少なかったと思うんです。基本的に、親は子育てにあたりまえのようにお金を使い、いくら使ったかなんて覚えてないですよね。まして、いつか返してもらおうとも…。
私が帰省途中に出会ったあの男性は、親御さんに計画を打ち明けたのでしょうか…。今頃になって気になります。
みなさんは、ある日突然、お子さんから「僕を育てるのにかかったお金、返すよ」って言われたらどうですか? 「僕の受験にかかった塾代、返すよ」って言われたらどうしますか?