前回の記事で、「中高一貫校に入ると、同じ試験に合格して入って来たのに次第に成績に差が出てくる」という話をしました。
本記事ではこの件をもう少し掘り下げてみたいと思います。
前回の記事ではそうした差がでてくる理由について、
・もともとの能力に差がある
・ポテンシャル、成長度に差がある
・入学してからの勉強量に差がある
・授業態度に差がある
・友達の質
などと想像してみました。
ただ、これらは成績に影響する「個の要因」ですね。
これとは別の観点で、早期に生徒間の差が出てくる「環境的な要因」があると思います。
それは、「中高一貫校の先取りカリキュラム」です。
中高一貫校の先取りカリキュラムは学校によって差がありますが、大雑把に言えば「高校2年の終わりまでに高校3年までのほぼ全ての履修内容を終える」ものです。
学習指導要領や公立校の学習進度と比較しての「先取り」という意味です。
私自身はこの中高一貫の先取りカリキュラムについて、
できる子を集めたからにはそれが望ましい
と考えています。
理解力・吸収力の高い子に対しては、1つの単元に時間をかけなくてもよく、逆にそこでゆっくりし過ぎると、授業が退屈になってしまう可能性があります。(実際には教え方の工夫で興味を持たせることは可能ですけどね)
それで、中高一貫の先取りカリキュラムですと、中2後半ぐらいには当然のように高校履修範囲に入ってくるわけですが、私はこのあたりがポイントだと思うのです。
私も経験があるのですが、高校で進学校に集まってくる子って、それぞれの中学では成績上位層に入っていた子です。
それが、高校に入って高校の履修範囲の勉強を始めると、かなり初期の段階で理解度に差が出てきます。高校履修範囲っていうのはそれぐらい難易度が高くボリュームもあり、進むほどに脱落者が出てきて、そのうち特定教科を切る(諦める)人が出てきますよね。よくある光景だと思います。
このように、高校履修範囲というのは、学力における「ふるい」の役割をしているとも言えるわけで、中高一貫校の先取りカリキュラムではそれがかなり前に来るわけですね。
これ、凄く怖いことでもあります。
例えば私は高校の数学Ⅰ以降、明らかについていけなくなりました。代数・幾何とかね、もう理解できていなかったので、解法を暗記するだけの学習で切り抜けました。好ましくない方法ですが。
ああいうポイントが、中高一貫校では中2の後半とか、中3で訪れるわけです。
まだ中高一貫校生活が半分以上残っているのに、「置いていかれてる感」を感じながら過ごすなんて、考えただけでも…。
ただ、ポジティブな考え方もできます。
躓きが早期なら、一度戻ってもよいのでリカバーして、追いつく猶予もあるわけです。
もともと優秀な子ならこれが可能なはずです。
もちろん、これを自主的に判断してできる子は稀だと思うので、これは親とか先生の役割だと思いますけどね。
私は自分の高校時代の勉強を思い返したとき、
「あの時の自分に『戻って勉強しなおす』という発想は持てなかった」と思います。
大人になり、あの時の自分を客観視して冷静に判断するからこそそういう選択肢が出るのであって、あの時自主的に判断することは無理だったと思います。
他力本願な考えですが、
「誰かそれをアドバイスしてくれる人がいたら、もしかしたらあの時の自分は持ち直すことができたかも」
とも思います。
高校生なんて、これぐらい甘ちゃんでよいと思います。
事実、周りの助けが必要なのですから。
そういう点で、「中高一貫校の中学段階で塾はいらない」とおっしゃる方も多いと思いますが、中高一貫校のカリキュラムに「乗れているか乗れていないか」の監督機能は絶対に必要だと思います。
この役割を家庭ではなくて塾に担わせるのであれば、私はその選択肢があってもよいと思います。
ただ、その場合の塾は、鉄緑会のような「先取りの先取り」をする塾ではなく(したい人はすればよいですが)、個に寄り添った指導をしてくれる塾の方が適していると思います。
先にも述べましたように、中高一貫のカリキュラムはそれ自体が適正な進度であると思います。
それを過度に恐れると、「『先取りの先取り』をしておいたらよいのではないか」みたいな発想に囚われてしまうこともありますが、それは別のリスクを生むので良い手ではありません。
所属校で上位に入っている必要はなく、成績は中位でよいのです。「理解しきれず置いていかれている部分」が無くカリキュラムに乗れてさえいれば、高2後半あたりからの受験勉強で十分勝負になるはずです。
私はそんな心構えでチリ太郎を見守ってきましたが、今のところは大丈夫なようです。
学校でのこと、勉強のこと、教えてくれない子もいますので難しいのですが、親はうまくフォローしてあげるよう、備えは怠らない方がよいと思います。